大使ご挨拶 バックナンバー

令和5年1月4日

新年のご挨拶 (2022年1月4日)

特命全権大使
在ウィーン国際機関日本政府常駐代表
引原 毅

 
 
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 
今年も新型コロナウイルス感染症拡大の下で新年を迎えることとなりました。長期化するコロナ危機による困難を克服するために、様々な変革の努力が世界中で行われています。国連第三の都市である当地ウィーンでも、いかにグローバルなガバナンスを維持し、実効的な国際協力を強化してこの危機を乗り越えてゆくか、挑戦の日々が続いています。
 
昨年を振り返れば、これまでの対面による外交活動が難しくなる中でも、いくつかの重要な外交的成果をあげることが出来ました。
 
3月には、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)と協力し、第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)をハイブリッド形式で開催しました。半世紀ぶりの日本での開催です。私は非公式協議議長として、感染症対策ゆえの様々な制約の中で、政治宣言の事前交渉の指揮をとりました。本会議で採択されたこの「京都宣言」では、コロナが刑事司法にもたらした悪影響や障害に対処しつつ、犯罪の防止と刑事司法の強化に国際社会が一致して取り組んでいくことが確認されました。日本では、コロナの下で大規模国際会議を開催した最初の成功例として大いに注目されました。
 
11月には、国際原子力機関(IAEA)が、東電福島第一原発事故後10周年の節目を捉え、原子力安全専門家会議をハイブリッド形式で開催しました。本専門家会議では、参加各国の経験と原子力技術の進展を踏まえ、今後の原子力安全強化の道筋について充実した議論が行われました。日本は、福島第一事故の教訓に基づく日本の原子力安全の取組状況を紹介し、IAEAと協力して世界の原子力安全の強化に一層貢献していく旨表明しました。
 
コロナ危機を乗り切り、より良い社会を構築する(Build Back Better)ために、国連工業開発機関(UNIDO)、IAEA,UNODC等の諸機関と連携し、感染症対策、経済復興、コミュニティ強化・女性のエンパワーメント等,幅広い支援を発展途上国に対して行いました。
 
こうした国際的な取り組みに、日本国民の皆様や日本企業の皆様から力強い支援が寄せられていることを改めて誇りに思います。そして、当地の国際機関でコロナのもたらす諸困難を乗り越えて日々活躍されている日本人職員の方々に敬意を表します。
 
当代表部は、本年も引き続き皆様と連携して、様々な業務に取り組んでいきます。
 
本年は、新型コロナの影響で延期されている核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議が開催される予定です。日本は、感染症やがんの対策を含め、原子力の平和的利用の促進にIAEAと協力していきます。また、本年9月には、「原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定」(RCA)の50周年を記念して、初の閣僚級会合がウィーンで開催される予定です。日本は、同協定も活用しつつ、アジア地域協力を積極的に先導します。さらに、厳しい国際安全保障環境が続く中、北朝鮮やイランの問題を始めとする核不拡散上の課題に対して、IAEAと緊密に連携して取り組んでゆきます。
 
日本は、広島出身の岸田文雄総理のリーダーシップの下、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けて取り組んでいます。本年9月には第10回包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ外相会合等を豪州と共に共催するなど、CTBTの早期発効に努めます。
 
ワッセナー・アレンジメント(WA)や原子力供給国グループ(NSG)といった輸出管理の取り組みにおいても、我が国の技術的な知見を活かした積極的な貢献を行いたいと考えています。
 
グローバル化に伴って、テロや国際犯罪、腐敗、薬物問題などの深刻化が世界的課題になっています。日本はUNODCと協力し、日本の専門的知見を生かしてこれらの課題に取り組みます。本年、私は犯罪予防刑事司法委員会(Commission on Crime Prevention and Criminal Justice (CCPCJ))の議長を務めます。サイバー犯罪に関する新条約の策定に向けた交渉においても、日本として積極的な役割を果たしていきます。
 
産業開発分野では、UNIDOとの協力を引き続き一層強化し、日本企業の技術も積極的に動員して、コロナ対策、海洋プラスチックごみ対策、産業バリューチェーン改善など、SDGsの実現に向けた歩みを後押ししてゆきます。

宇宙は今や経済社会の発展に幅広く関わるフロンティアです。国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)においては、日本の宇宙分野の先端的能力を活用し、宇宙の平和利用促進や宇宙技術を活かしたSDGs達成に向けて、国連宇宙部(UNOOSA)と協力して尽力します。
 
大きな変貌の中にある国際社会において、当地ウィーンから多国間主義の強化を通じて世界の諸課題に一層の貢献を果たせるよう、日本政府代表部としてしっかりと取り組んでいきます。皆様の一層のご理解とご協力を賜れればまことに幸いです。

本年の皆様のご健康とご多幸を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶といたします。

新年のご挨拶 (2021年1月4日)

特命全権大使
在ウィーン国際機関日本政府常駐代表
引原 毅

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 
 新しい年をロックダウンの中で迎えることになりました。新型コロナウイルス感染症の拡大で世界全体が大きな混乱を強いられ、人々の命や生活、経済と社会の存続に直接かかわる脅威に直面しています。国際社会のガバナンスの一環を担う在ウィーン国際機関にとっても、これは未曾有の挑戦です。
 
 対面での多国間会議の開催が難しくなり、協力現場でのプロジェクト実施も容易ではありません。各国際機関はこうした様々な活動上の困難に対して、オンライン参加を活用した会議開催、地域事務所への権限委譲等、様々な工夫をこらした任務遂行を図っています。その上で、当面の最重要課題となったコロナ危機に活動の焦点を迅速、柔軟にシフトしつつ、各々の専門性を活かした様々な国際協力を展開しています。この状況はウィーンが担う多国間主義の重要な意義を、改めて私たちに認識させるものです。
 こうした取り組みに日本国民の皆様や日本企業からの力強い支援が寄せられていることを誇りに思います。同時に、国際機関で働かれる日本人職員の方々のご活躍に改めて敬意を表します。
 当代表部としましても、厳しい環境の変化を乗り越え、我が国として間断ない国際協力の継続を担保するために、職員一同、創意工夫を図りつつ本年の業務に取り組む決意です。
 
 本年3月京都で、第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)が国連薬物犯罪事務所(UNODC)主催により、オンライン参加も交えたハイブリッド形式で開催されます。国際社会における法の支配の普及をリードする我が国の姿勢を示す格好の機会です。私は、政治宣言交渉の議長として、今後の犯罪防止・刑事司法分野の政策指標となる政治宣言の策定に向けて、引き続き全力で取り組みます。UNODCとはさらに、テロや国際犯罪、腐敗、薬物問題などグローバル化に伴って深刻化する世界的課題に対処するため、日本の専門的知見も生かしつつ、しっかり協力していきます。
 原子力の分野では、本年、ニューヨークで5年に一度の核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議が開催される予定です。国際原子力機関(IAEA)においても、この節目の機会を念頭に、核不拡散や感染症対策を含む原子力の平和的利用の促進について更なる議論が行われます。勿論イラン、北朝鮮といった核不拡散上の重要課題に対する取り組みは一刻も止まることはありません。我が国は、日本と世界の平和、安全及び繁栄の確保・増進に向け、これらの活動に積極的に貢献していきます。
 本年は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名開放から25周年に当たります。我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界に向けて本条約の早期発効に引き続き取り組み、核実験検知体制の強化のために途上国を支援していきます。
 ワッセナー・アレンジメント(WA)や原子力供給国グループ(NSG)といった輸出管理レジームの議論においても、我が国の強みである技術的な知見も活かして積極的な役割を果たしたいと考えています。
 我が国は、産業開発分野で独自の強みを持つ国連工業開発機関(UNIDO)と協力し、日本企業の技術を活かして途上国のコロナ危機対策を支援しています。本年も同機関の政策決定にしっかりと関与し、効果的なコロナ対策とSDGsの実現に向けた歩みを後押しして参ります。
 世界の宇宙活動がますます活発化・多様化し、社会・経済に大きな便益をもたらすようになっています。本年は、我が国専門家が、宇宙分野の国際的なルール作りを担う国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)法律小委員会の議長を務めます。我が国は、宇宙分野の先端的能力・知見を生かし、国連宇宙部(UNOOSA)と協力して、国際的なデブリ問題への対処、宇宙空間における法の支配、宇宙技術を活かしたSDGs達成に一層貢献していきます。
 
 本年も大きな挑戦の一年となることは間違いありません。このような時こそ、国際社会の知恵と力を結集して多国間主義の強化を図りつつ、一つ一つの課題にしっかりと取り組むことが、私たち日本政府代表部の責務だと考えています。皆様の一層のご理解とご協力を賜れればまことに幸いです。

 本年の皆様のご健康とご多幸を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶といたします。

引原大使ご挨拶(2020年6月)

特命全権大使
在ウィーン国際機関日本政府常駐代表
引原 毅


 2019年9月,在ウィーン国際機関日本政府代表部大使として着任した引原毅です。これまで海外勤務は、韓国,ロシア,米国(ボストン),直近のラオスと、二国間関係の仕事が続いていました。多数国間外交の現場に身を置くのはパリにあるOECD 代表部以来実に25年ぶりとなり、気を引き締めて取り組んでおります。ウィーンでの勤務は今回が初めてで、素晴らしい環境をありがたく思っています。
 
 ウィーンは,ニューヨーク,ジュネーブに次ぐ第三の国連都市です。核の番人と言われるIAEA(国際原子力機関)を始めとして,UNODC(国連薬物・犯罪事務所)、UNIDO(国連工業開発機関),UNOOSA(国連宇宙部)、CTBTO(包括的核実験禁止条約機関),ワッセナー・アレンジメント(通常兵器の輸出管理),原子力供給国グループ(原子力関連資機材・技術 の輸出管理)等,専門性の高い重要な機関・枠組みが数多く所在しています。それらの所掌は多岐にわたり,いずれも日本の国益に直結する政策分野です。当代表部は日本政府を代表してこれらの国際機関等と連携しつつグローバルな課題に取り組み,日本及び世界の平和・安全と繁栄の確保に寄与するために日々尽力しています。
 
 今般の新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大は,医療・保健分野にとどまらず経済社会全体に亘る危機の様相を呈しました。この危機に対処するには国際的な連携・協力が不可欠です。当地ウィーンの国際機関は,それぞれの専門性に基づく強みを活かして、感染症の診断・予防から産業復興対策にまで至る国際協力を展開しています。日本政府はこうした協力を後押しするために早い段階から当地機関に対する様々な協力に努めています。日本の民間企業からも貴重な力強い支援が寄せられ、大いに心強く思っています。
 
 当地でも出入国規制をはじめとする防疫上の規制措置が長期にわたっています。当地国際機関で活躍されている邦人職員の皆様は,様々な困難をお感じになっておられることと存じます。幸い先月来多少とも希望の持てる状況となり、各機関の業務も次第に軌道に乗ることが期待されています。しかしまずは皆様の健康と安全が第一です。皆様から当代表部に対する御要望やお気づきの点があれば,いつでもご連絡頂ければ幸いです。
 
 今回の危機を通じて、在ウィーン各国際機関の果たしている役割の重要性が改めて明らかになりました。今後ともこれら機関における活動を通じて、日本と世界の平和、安全及び繁栄の確保に貢献するために、当代表部一丸となって取り組んでまいります。皆様のご理解とご支援をお願い申し上げます。