代表部案内

令和5年1月4日

大使略歴

引原 毅
 
引原 毅
(ひきはら たけし)

特命全権大使
在ウィーン国際機関日本政府常駐代表

昭和34年12月17日生(奈良県)
 
    昭和57年  3月 東京大学法学部第二類 卒業
      4月 外務省入省
    平成11年 1月 在大韓民国大使館 参事官
      10月 大臣官房総務課企画官 兼行政改革推進室長 兼政務次官室長
    平成12年 9月 アジア局南西アジア課長
    平成14年 8月 欧亜局西欧第一課長
    平成16年 2月 内閣参事官(内閣官房副長官補付)
    平成18年 8月 在ロシア大使館 公使
    平成21年 9月 日本APEC準備事務局長 大使
    平成22年 12月 在ボストン総領事館 総領事
    平成24年 10月 欧州局参事官(大使)
    平成25年 5月 欧州局審議官(大使)
      6月 大臣官房審議官(総括担当)
    平成26年 7月 総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長 大使
    平成27年 10月 特命全権大使 ラオス国駐箚
    令和元年 9月 特命全権大使 在ウィーン国際機関日本政府代表部在勤

新年のご挨拶 (2023年1月4日)

特命全権大使
在ウィーン国際機関日本政府常駐代表
引原 毅

 
 
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 
コロナ危機への取り組みが続く中、昨年2月に始まったロシアによるウクライナ侵略によって、国際社会はさらに新しい挑戦に直面することになりました。法の支配が脅かされ、エネルギー、食料、サプライチェーンといった様々な問題が複雑化、深刻化しています。
当代表部の業務も、こうした情勢変化の影響をもろに被っています。ウクライナ情勢があらゆる国際機関の活動に影を投げかける中で、危機に瀕したグローバルなガバナンス機能を如何に維持していくのか。国連都市の一つであるウィーンもこの課題に直面しました。当地の各国際機関は、情勢の変化に追われつつ、その中でそれぞれの課題に取り組み、成果を出すよう尽力しています。
 
我が国は、昨年一年を通じてこうした各機関の取り組みを支援しつつ、我が国と各機関との連携・協力関係を強化し、その中で様々な外交的成果をあげることが出来ました。その一端をご紹介したいと思います。
 
昨年一年間、私は犯罪防止刑事司法委員会 (CCPCJ)の議長を務めました。我が国にとって、国連薬物犯罪事務所(UNODC)と日本の協力により開催された第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス、2021年3月)の成果をしっかりフォローアップし、持続的成長の基盤となる法の支配の実現に取り組むことがもっとも大切な課題です。そのための国際社会の連携・協力を一層強化すべく、議長国としてリーダーシップの発揮に努め、具体的成果につなげることが出来ました。
 
IAEAにおいては、ロシアによるウクライナ侵略の結果、同国にある原子力施設の安全問題が重大な懸念を呼び起こしています。我が国は理事会の主要メンバーとして、グロッシー事務局長のイニシアティブによる原子力安全及び核セキュリティ確保のための活動を積極的に支援してきました。また、東電福島第一原子力発電所の廃炉計画に関するIAEAとの協力を幅広く展開しました。特にALPS処理水問題に関するIAEAの積極的関与を推し進め、本件作業の安全性の科学的担保と関係者の理解増進を図っています。
 
昨年8月には、ニューヨークで核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議が6年振りに開催されました。岸田総理大臣ご自身が会議初日に参加、「核兵器のない世界」を実現するための「ヒロシマ・アクション・プラン」を提示され、多くの締約国から高い評価と支持を得ることができました。私自身も本会合に参加し、原子力の平和的利用推進等に向けた合意形成に尽力しました。
結局今次会合では、ロシアの反対により成果文書のコンセンサス採択には至りませんでした。とは言え、ロシア以外の全ての国が合意する成果文書案が作成されたことは、NPT体制を維持・強化し、核軍縮・不拡散の具体的な取り組みを進める上で有意義であったと考えます。
 
我が国は、昨年9月ニューヨークでの第77回国連総会ハイレベル・ウィーク期間中に、包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ首脳級(ハイレベル)会合を豪州とともに開催しました。本会合は、先に触れた8月のNPT運用検討会議において岸田総理大臣が開催を発表し、初めて首脳級で開催されたものです。約60か国が出席し、4か国の首脳がステートメントを行いました。CTBT署名開放25周年の年に、これまでの成果を振り返りつつ、本条約の早期発効に向けた国際社会の機運を高める機会となりました。
 
コロナ危機を乗り越え、より良い社会を構築する(Build Back Better)ために、国連工業開発機関(UNIDO)、IAEA、UNODC等の諸機関と連携し、食料安全保障、がん対策、産業高付加価値化、コミュニティ強化、女性のエンパワーメント等,幅広い協力事業を多くの発展途上国において展開しました。
 
こうした取組に対して、日本国民の皆様や日本企業の皆様から暖かく力強いご理解とご支援を頂いていることを、まことに嬉しく誇りに思います。同時に、コロナ危機やウクライナ情勢等、ますます複雑で流動的な状況の中で、さまざまな国際的課題に取り組んでおられる国際機関日本人職員の方々のご活躍に、改めて敬意を表します。
 
当代表部は、本年も引き続き皆様のご理解とご支援を仰ぎつつ、様々な業務に取り組んでいきます。
 
本年5月にはG7サミット(主要国首脳会議)が初めて被爆地である広島において開催されます。この機会を捉え「核兵器のない世界」の実現に向け、CTBTの発効促進及び検証体制強化に一層貢献していきます。
 
我が国は、G7の議長国として、ウクライナの原子力施設の安全及び核セキュリティの問題等について、G7諸国を始めとする関係各国と連携してIAEAをしっかり支援していきます。また、北朝鮮、イランの問題を始めとする核不拡散上の課題に対して、IAEAと緊密に連携しつつ取り組みます。ALPS処理水の取り扱いについては、引き続きIAEAの積極的関与を得つつ取り組みの推進に努めます。
 
グローバル化と国際情勢の流動化に伴って、テロや国際犯罪、腐敗、薬物問題などの深刻化が世界的課題になっています。我が国はUNODCと協力し、その専門的知見を生かしてこれらの課題に取り組みます。
犯罪分野では、日本は、昨年の京都コングレスで採択された成果文書「京都宣言」のフォローアップの一つとして、再犯防止国連準則策定を主導しています。充実した内容の準則となるよう、交渉のリーダーシップを発揮していきます。また、サイバー犯罪に関する初の国連条約の起草交渉が本年一層本格化します。同条約が、本分野での実質的な国際連携の強化に資するものとなるよう、引き続き積極的に交渉の進捗に貢献します。麻薬対策では、「ダメ。ゼッタイ」のスローガンで実施されてきた国連支援募金が本年30周年を迎えます。3月には記念イベントを開催し、官民の連携による薬物乱用防止活動の重要性を訴えます。
 
国際社会の地政学的な分断、対立が深まる中で、効果的な輸出管理の枠組みを維持・構築していくことは、国際社会の平和と繁栄にとってますます重要性を増しています。ワッセナー・アレンジメント(WA)や原子力供給国グループ(NSG)といった輸出管理の取組において、我が国の技術的な知見を活かした積極的な貢献に努めます。
 
産業開発分野では、UNIDOとの協力を引き続き一層強化します。日本企業の技術も積極的に動員して、アグリビジネス・食の安全保障、環境、エネルギー・気候変動対応など、SDGsの実現に向けた歩みを一層後押ししてゆきます。
 
今や宇宙活動には、経済社会の発展に対する幅広い貢献が期待されるようになりました。民間企業が主体の商業利用がますます活発化し、探査分野でも国家及び民間企業による月探査等が加速しています。宇宙分野における我が国の先端的能力や技術、国内法制の知見等を活用して、国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)や国連宇宙部(UNOOSA)を通じた国際協力を展開し、宇宙の平和利用促進や宇宙技術を活かしたSDGs達成に貢献します。
 
歴史的に大きな岐路に立つ今日の国際社会において、グローバル・ガバナンスの維持はますます喫緊の課題となっています。そのために、当地ウィーンから多国間主義の活用と強化を通じて一層の貢献を果たせるよう、日本政府代表部としてしっかりと取り組んでいきます。皆様の一層のご理解とご協力を賜れればまことに幸いです。
 
本年の皆様のご健康とご多幸を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶といたします。

 


【大使ご挨拶バックナンバー】

代表部に関するご案内

 

在ウィーン国際機関日本政府代表部
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開館時間: 9:00 - 17:45

2023年の閉館日は、土曜、日曜、及び以下の日程です。
 
   ・1月2日、3日、6日
   ・2月23日
   ・4月7日、10日
   ・5月1日、29日
   ・6月29日
   ・8月15日
   ・10月26日
   ・11月1日
   ・12月25日、26日、29日