ACUNS主催ウィーン国連会議パネル 「CTBTO―回顧と前進:CTBT20周年の始動」の開催について

平成28年1月13日
1.1月13~15日、ウィーンで開催されている「平和的及びより持続可能な世界のための新たなアプローチ」のテーマの下でのACUNS (Academic Council on the United Nations System)主催ウィーン国連会議の初日に、パネル「包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)―回想と前進:CTBT20周年の始動」が開催されました。同パネルには、パネリストとして北野ウィーン代表部大使のほか、サリベイ・カザフスタン代表部大使、クメント・オーストリア外務省軍備管理・軍縮・不拡散局長、ガートナー・オーストリア国際政治学会会長が出席し、ドュ・プリーズCTBTO準備委員会暫定技術事務局法務対外関係局渉外・儀典・国際協力課長がモデレーターを務めました。
 
2.同パネルにおいて、北野大使は、核軍縮・不拡散体制の中でCTBTが不可欠な役割を担っていることを指摘し、署名開放20周年を迎える本年が同条約の発効促進の取組において重要な機会となることを強調しました。その上で、北野大使は、CTBTの発効実現に向けて「3つの強化・向上」(three enhancements)(検証体制の強化、政治的支持の強化、市民の意識及び支持の向上)を推進することを提言しました。第一の検証体制の強化について、北野大使は、CTBTOによる核実験の国際監視システムの下でこの20年間で282か所の認証済観測所が設置されるなど目覚ましい前進を見せており、1月6日に行われたものを含めて過去4回にわたる北朝鮮の核実験を探知するなどの成果をあげていることを指摘しつつ、これをさらに拡充・強化させていく必要があると述べました。また、第二の政治的支持の強化については、CTBTの発効要件国のうち未批准国8か国の中にも、近年、一定の前向きな姿勢が見られるところがあることを紹介し、日本は、発効促進共同調整国としてカザフスタンと共に、残る発効要件国への働きかけをより一層強化するとの決意を表明しました。さらに、第三の市民の意識及び支持の向上については、CTBTの発効に向けて、メディア、科学者コミュニティ、NGO及び学術界と協力しつつ、市民の意識と支持を向上させるべきであると述べました。最後に、北野大使は、これら「3つの強化・向上」は各々は小さなステップではあるが相互補完関係にあり、これらの取組がCTBTの発効促進に繋がっていくことが期待されると強調しました。
 
3.本パネルでは、ガートナー会長から非核兵器地帯の拡大の可能性が論じられたほか、サリベイ大使からはカザフスタンの核軍縮・不拡散の取組について、クメント局長からは核兵器の人道的結末について注目するアプローチについて紹介されました。その後、CTBTの重要性や今後の同条約の発効促進の取り組みのあり方等についてパネリストと聴衆との間で熱心に意見交換が行われ、その中で、発効促進における共同調整国の役割の重要性やCTBT署名開放20周年の機会に政治レベルの取組の強化や市民の意識向上に努める必要性が確認されました。また、CTBTの発効促進のためには、残りの発効要件国それぞれの事情に応じたきめ細かい取組が必要であり、各国の批准のための環境作りが求められることが指摘されました。