井上尚子(国際監視制度局放射性核種専門官)さんへのインタビュー

2017/2/3
CTBTOに勤務することとなった経緯や動機について
 
前職は、日本原子力研究開発機構(JAEA) で、核不拡散やIAEA保障措置のための技術開発や、福島第一原子力発電所の1~3号炉の炉内溶融燃料を取り出す際に含まれる核物質を計量するための技術開発のコーディネートやマネジメントをしていました。しかし、遡るところ学生時代から入社10年間ぐらいは、環境放射線・放射能のモニタリングに従事していて、現在の業務に必要な専門性は主としてその頃に身につけたものです。
 
若い頃に米国の国立研究所に派遣されて勤務したことがあり、次は国際機関で働きたいと漠然と考えていました。そのためには学位が必要と考え、40歳を過ぎていましたが、ちょうど東大が社会人も入学できる博士課程を新設したタイミングで入学し、6年かけて学位を取得。その後、薦めて下さる方がいたことからCTBTOに絞って応募し、3ポスト目の応募で採用に至りました。
 
CTBTOでの仕事内容について
 
国際監視制度局技術開発課という部署で、世界に16ヵ所ある放射性核種の公認実験施設(ラボ)の品質保証・品質管理(QA/QC)プログラムの全体調整が主業務です。これには担当する実験施設の認証や認証後に定期的に施設に訪問しての品質監査も含みます。他にも、放射性核種監視観測所・希ガス監視観測所の建設、機器の設置、認証や再認証を行うこともあります。この際には、セキュリティ上の問題がない限り、現地に行って認証のための最終テストを行います。
 
CTBTOでの仕事の魅力ややりがいについて
 
日本で核不拡散分野での二国間の国際共同研究の企画やマネジメント、多国間国際共同研究に長年携わっていた経験は、CTBTOでも非常に役に立っています。CTBTOという組織は、国際機関にしては比較的小さく、また、新しい組織です。それでありながら、CTBTO内も仕事の相手も多様な国と人であることから、ダイナミックに物事が動く・進むことがあります。多様性とダイナミズムの中で仕事ができるというのが、私にとってのCTBTOで働く魅力になっています。
 
CTBTOでの仕事を通して挑戦・経験したいこと
 
組織内外ともに多様な考えの人が相手であることから、コミュニケーションの難しさは日本国内の比ではなく、もどかしさをいつも覚えます。その中で自分らしく伸び伸びと取り組めるようになりたいと思っています。もっと同僚や相手国と密なコミュニケーションをとって、自分の強みを生かせるように挑戦していきたいと思います。
 
ウィーンでの生活の印象について
 
ウィーンに住んで4年目に入りましたが、しっかり腰をすえてウィーンの街で暮らすと価値観が変わってくる気がしています。不便でもゆっくり生活できることや、「自分が」どうしたいかを中心に持ってくる発想など、環境に慣れていく中で変わってきました。残りの仕事人生も長くないので、自分がどう生きたいかを発想の真ん中に持ってくるようにしています。最近大病をして、ウィーンの病院で治療を受けた経験も貴重でした。
 
仕事は集中しますが、休暇はしっかり休む。土日にハイキングに出かけてしっかり歩いた後の月曜日は集中力が違います。
 
オペラ、コンサートもふんだんに機会があります。お正月には毎年息子達とオペレッタ「こうもり」を見に行くのが恒例となりました。昨年は長男がスウェーデンに留学していたので、春~夏にかけて、ハンガリーやスロヴェニアなど近隣の国に週末旅行に出かける機会がありました。夏には日本からやってきた次男と一緒に、オーストリア西部に数日出かけて、映画「サウンド・オブ・ミュージック」の撮影にも使われたシャーフベルク山など、お天気の良い日にハイキングを楽しみました。嫌なことがあっても、桁違いの美しい風景を思い出すと、ま、いいか、と思える余裕が生まれました。