国際機関職員インタビュー : 鳥居 直樹 UNIDOエネルギー部 産業開発専門官

2020/6/15
VIC(ウィーン国際センター)内のオフィスにて
鳥居さんが現在担当されている業務についてお聞かせください。
 
 環境・エネルギー局のエネルギー部、気候技術・イノベーション課で、アジア・アフリカ地域におけるプログラム・プロジェクトマネジメントを担当しています。具体的には、小規模水力、太陽光、地熱、廃棄物発電等の再生可能エネルギー技術の導入促進やクリーン技術・イノベーションに関する起業家育成のための事業等を実施しています。これらの事業を通じて、気候変動を含む環境問題へ対応しつつ、国内外のパートナーシップや格差の是正にも配慮しながら、事業者・起業家のビジネス支援、雇用促進、産業化等による経済的便益を創出・拡大し、加盟国の持続可能な開発に貢献するべく取り組みを進めています。もちろん、個別事業の専門性や地理的な範囲も広いので、専門家や事業者の方々、本部・現地事務所のUNIDOスタッフやその他の国際機関等とも協力しながら日々業務を進めています。 
 






 

ルワンダ出張時に、同僚と
鳥居さんのこれまでのご経歴と、国際機関でのお仕事を目指したきっかけを教えてください。
 
 UNIDOに着任する前は日本の研究機関で2年、また省庁で7年ほど働いていました。この10年ほどは主に気候変動対策を通じた途上国の開発支援に関わる仕事に従事し、ここで得られた経験が今の仕事にもつながっているのですが、さらにさかのぼって、2005年に大学を卒業したころは、自分の将来もやりたい仕事も全く見えておらず漠然としていました。もともと「国際的な仕事」にあこがれがあって、学部もその観点から選択してはいたものの、学生時代に趣味のダンスにのめりこみ、それはそれでもちろん素晴らしい経験もできて友人も得ましたが、気が付いたら先々について深く考えることなく大学を卒業していたという感じです。
 社会に出て周りの方々が真摯に仕事に向き合っているのを見る中で、初めて、自分は人生で何に取り組みたいのかということを考えるようになり、そんな中で国際機関での勤務という選択肢を具体的に考え始めました。理由は様々ありますが、大学卒業後特に目標もなく暮らしていた自分を振り返る中で、これまで自分が当たり前のように享受していた様々な機会や選択肢を当然には得られない人々が世界には数多くいることに改めて気づかされ、もしそのような状況を変えるために何かしらできるのであれば、それは情熱を注げる仕事になると思ったというのが一番だと思います。自分なりの恩返しという感覚もあると思います。
 そのためには、専門分野での知識をつけないといけないと思い、2010年に英国のエディンバラ大学院で環境と開発という専攻で修士号を取得しました。当時30歳だったので、仕事を辞めて大学院に行くということに不安がなかったわけでは無いですが、再チャレンジという希望の方が大きかったと思います。大学院ではいわゆる開発途上国においてどのようにして経済的な成長と気候変動対策を両立し促進できるかといったテーマで研究を行い、幸いなことにその後、上述の通り関連分野での業務経験を得ることができました。日本での仕事も非常に充実していて、業務を通じて国内外で素晴らしい上司・同僚やカウンターパートにも出会え、多くを学ばせていただきましたが、やはり国際機関で働いてみたいという希望も捨てきれず、仕事をしながら、様々な国際機関の空席公募を見たり、実際に採用試験を受けたりしていました。そんな中で、仕事を通じて知り合った方からUNIDOでの空席情報について話を伺い、採用試験を経て採用が決まりました。



 

TICAD7で実施したサイドイベント
“パワーリング・アフリカン・イノベーション”
(壇上左から二番目が筆者)
国際機関での仕事の進め方や、日々の業務で心掛けていることなどについてお聞かせください。

 まだUNIDOに着任してから1年経っていませんし、国際機関といっても様々あり、さらに組織内でも様々あると思いますので、あくまで個人的な感想としてですが、一人一人の人間が、組織として仕事を進める中で、どのようにして各人が自らの役割を果たしつつ、付加価値をつけていくかということは、これまでと大きな違いはないかなとは思っています。もちろん世界各国から人が集まって働いているので、多様性の幅がやや広いかなと感じることはありますが、いずれにせよ人それぞれですから、お互いをリスペクトしつつ、物事を前に進めていかなくてはいけないなと考えています。英語力については、当然ながら高いに越したことはないのですが、すべての職員がネイティブレベルかといえばそうではなく、英語以外の様々な母語を持つ人がいることを前提に、意思疎通を円滑に進めるべく努めていると思います。
 日々の業務については、本部でのプログラム・プロジェクトマネジメントには共通して当てはまるのだと思いますが、通常は各プログラム・プロジェクト実施地との遠隔のやりとりで進めることになりますので、もともとの計画と現状、あるべき姿とのギャップとその解決のための方策、うまくいかなかった場合の代替案をどうするかなどは、日ごろから特に意識しつつ、状況を適切に把握するように努めています。物事が計画通りに進まないことはやむを得ず発生しますので、柔軟な対応ができるよう心構えと準備をしておくことが重要だと思っています。




 
TICAD7で実施したサイドイベント
“パワーリング・アフリカン・イノベーション”にて
これから国際機関への就職を目指す方々へのメッセージをお願いします。

 国際機関でポジションを得るというのは、その時々に自分の経歴や知識、専門性にあった職種があるかどうかを含め、タイミングが左右するところも多分にあると思いますし、任期もあるのでその後の生活をどうするかなど不安も大きいと思います。それらを含めチャレンジするかどうか、私の場合の答えはYesでした。楽天的といえばそうなのかもしれませんが、どのような形にせよチャレンジすることとそこで得られた経験はきっと無駄にはならないだろうと思っています。

 国際機関で働くに至る道筋は様々で人それぞれのアプローチがあるのではと思います。実現したい目標は何か、ポジションを得たら何をしたいか、自分に何ができるか、そのために何をするかといったことについて自分の中で一貫したストーリーをもって、それをできる限り掘り下げることができれば、きっと道は開けるのではと思います。大まかにでも方向性が見えていれば、関連しそうな空席公募をみて、応募要件を確認してみるのもよいと思います。それによって、求められている経歴や知識、専門性が見えやすくなると思います。また、矛盾するようにも感じるかもしれませんが、自分自身に言い聞かせていることとして、仕事を進めるにあたっては専門分野での知見はもちろんのこと、広い視野やバランス感覚などを含め「人間力」を上げることも必要と考えており、幅広い興味関心をもって様々な経験をすることも有益かなと思っています。私自身、学部卒業後の漠然とした不安、焦り、迷いを含めいろいろと回り道しましたが、今思えばそのような期間も自分にとってはプラスだったと考えています。タイミングについてはなかなかコントロールできませんが、何か自分に合いそうなポジションがあった時に即応できる体制をできる限り整えておくこと、そして、あきらめずにチャレンジし続けることも重要かなと思います。


※ 本稿で示した見解はすべて筆者個人のものであり、筆者の所属する組織としての見解を示すものではありません