IAEAインターン体験記:國友理紗さんへのインタビュー

令和6年3月15日

IAEAでのインターンを経験した國友理紗さん

1.国際機関(IAEA)にご関心を持つようになったきっかけは何ですか?
中学・高校時代からの私の興味と憧れを実現できる仕事を考えていた時に、IAEAの存在を知りました。中学生の時に大学病院で職場体験を行ったとき、放射線を扱う仕事に興味を持ちました。またスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定された高校で課題研究を1年間行ったことで、物理学が日常に生かされていることを実感し、興味を持ちました。また高校では中国の学生との国際交流プログラムにも参加して、海外の方と交流する楽しさも経験し、国際的に活躍する職業に憧れを抱きました。国際機関として、原子力の安全管理から技術応用まで幅広い任務を持ち、これからの時代において大切な役割を果たすIAEAでの勤務は、まさに私が理想としていたものでした。
 
 
IAEA/NAPC/Nuclear Data Section Section headのArjan Koning氏と
 
2.インターンシップ期間中の業務や、特に印象に残っていることについてお聞かせください。
私は東京工業大学の原子力規制人材育成事業である国外インターンシップ制度を通じて、IAEA原子力科学・応用局物理化学部(NAPC)核データ課(Nuclear Data Section)に2023年8月から6か月インターンとして派遣されました。私はこの6か月のインターン中に2つの業務を行いました。
まず前半3か月間は、核融合炉のセキュリティ、核不拡散問題について文献調査を行いました。現在、核融合炉の建設が促進されているのに対して中で、法整備はまだ万全ではないのが現状です。核融合反応によって生じた高速中性子と、Th-232もしくはU-238を反応させると、核兵器材料のU-233、Pu-239が生成されるリスクがあります。私はこの問題に着目して、IAEAスタッフに理解を深めてもらうことを目的としたプレゼンテーションを作成し、発表を行いました。
 

上司のGeorg Schnabel氏、Kalle Heinola氏と
 
後半3か月間は、核データ評価コードの作成を行いました。核データとは、インプットエネルギーに対する原子核の反応断面積をまとめたものです。断面積の値が大きいと、その反応が起こりやすいことを表します。核データが無ければ、原子核がどのような反応を起こすかわかりません。そのため核データは、原子炉建設や放射線治療などの応用分野にとって必要不可欠です。現在、世界中で行われている実験によってデータの整備が進められていますが、それと同時に理論的な統計処理を使ってデータを評価し、どの実験データが正確であるかを判断できるようにすることも重視されています。そこで私は核融合材料として使われるFe-56を取り上げ、この核データ評価に関してレポートを作成しました。
インターン中に印象に残っていることは、核反応に関するワークショップに参加したことです。世界で活躍する研究者のレクチャーを対面で受け、学びを深めることができました。また、同じ分野で頑張っている若いPhDやPostdocと出会えたことは、私にとって印象的でした。彼らと研究について話し、自分ももっと頑張らなければと強く思いました。
 
 
インターンの友人と

3.今回インターンを経験し感じたこと、今後の目標についてお聞かせください。
今回のインターンの経験から、決断を迷った際は、まずやってみることが大切であると学びました。仕事でも、遊びにおいても、自分の殻を破って新しい物事にチャレンジすることは、自分自身がより成長できるきっかけになると実感しました。そのため、インターン中はやらずに後悔するより、挑戦することを心がけました。その結果、日本で生活していたときよりも自分の考え方が前向きに変わったと思います。
今後の目標は、核データの研究を進めることです。核データ課で仕事を行い、この分野に深く携わりたいと思うようになりました。修士課程修了後は、博士課程に進学し、核データに関する研究をさらに進めたいと考えています。
また、修士課程修了後にIAEAの奨学金プログラム「The IAEA Marie Skłodowska-Curie Fellowship Programme」の制度を利用し、研究機関でインターンを行うことを考えています。原子力を専攻する女性の修士学生を対象としたこの奨学金プログラムでは、修士課程時の学費と生活費が支給され、修了後はIAEAと協力している国際機関や研究所に1年間インターンに参加できる権利を与えられます。この奨学金を受賞できたことは、自分の将来の道を設計する上で大きな助けとなりました。
 
4.国際機関でのインターンを考えている皆様へのメッセージ、アドバイスをお願いします。
国際機関のインターンと言っても、さまざまな部署や仕事があります。インターン勤務を通して、自分がどのように成長したいか目標を持つことが大切です。また、国際機関の中に入ってみると、より広い視点で見て考えることができます。私もインターンを経験して人生観が変わったので、興味のある方はぜひ応募されることをお勧めします。
 

IAEA Flagsの前にて