平和の鐘がつなぐ想い -平和の鐘建立30周年記念イベント(2025年ウィーン)

令和7年3月12日
 
 
2025年3月12日、オーストリア・ウィーンのウィーン国際センター(VIC)において、「平和の鐘」建立30周年を記念するハイレベル・イベントが開催されました。
 
この「平和の鐘」は、1995年に日本の民間団体である麻薬・覚せい剤乱用防止センター(DAPC)および日本相撲協会により、薬物のない社会、そして争いのない世界への願いを込めてVICに寄贈されたものです。本イベントは、同鐘の設置から30年の節目にあたり、国際社会における薬物対策および平和の推進における国際協力の重要性を再確認する機会として開催されました。
 
当日は、UNODCのワーリー事務局長、国連麻薬委員会(CND)のクマラン議長(在ウィーン国際機関インド政府代表部大使)、国際麻薬統制委員会(INCB)のトゥーフィク委員長など、200名を超える外交官、国連職員などが集まりました。
 
ワーリー事務局長は、薬物の乱用や違法取引が平和と安定への脅威となっている現状を指摘し、国際的な連携の必要性を強調しました。そのうえで、「平和の鐘」は、より安全で健康的な社会の構築に向けた決意と希望を象徴するものであり、この鐘が今後も国際社会における団結の象徴であり続けることの重要性を訴えました(※スピーチ全文はこちら)。
 
クマランCND議長は、薬物問題が多面的かつ深刻な課題であることを踏まえ、包括的かつ協調的な対応が必要であると述べました。そして、イベント参加者の一人ひとりが重要な役割を担っていることを再認識し、行動の必要性を呼びかけました。
 
DAPCの藤野理事長は、平和の鐘寄贈に至る背景として、1993年に日本全国で開始した募金活動や、官民が連携することの意義に触れました。また、ニューヨーク国連本部にも別の「平和の鐘」が設置されていることに言及し、平和と薬物のない社会を願う思いが、民間からも継続的に発信されてきたことを紹介しました。理事長は、今後もVICにおける主要な機会でこの鐘が鳴らされ続けることへの期待を述べました。
式典では、参加者による鐘撞きセレモニーが行われたほか、日本の音楽演奏、居合道の実演、日本酒の提供などを通じて、日本文化の紹介も行われました。これらの文化的要素は、薬物のない社会を目指すメッセージに彩りを添えるとともに、平和を希求する気持ちを一層強く共有する場となりました。